ハイレゾ音源が普及してきて、「音源」も見直す機会が増えたのではないかと思います。
過去にCDとして持っていたアルバムなんかも、デジタル・リマスタリング等の手法でハイレゾとして配信されていたり。
最近の音楽も「CD」 or 「ハイレゾ配信」の同時展開をよく見かけます。
CDにもハイレゾにもそれぞれ「良さ」があるのですが「ハイレゾ、CD、レコード、カセット。音源別で比較をしてみたよ」に書いた通り、それぞれに魅力がある。
「過去に取り込んだ音源をもっと良くしたい。」
そう考えて、手持ちの音源をハイレゾ化したくなる方もいるかも知れませんね。
しかし、それら全てがハイレゾ音質となるわけではないんです。
疑似ハイレゾって?

mp3、AAC、wavなどの非ハイレゾ音源 (ローレゾ音源)を → 48kHz/24bit以上に上げて、ハイレゾとして認識させた音源のことですね。
元の音源がmp3であれば、それを強引にアップサンプリングしてハイレゾの規格まで引き上げることができます。
それを「疑似ハイレゾ」と呼んだりしますが、なかなか通常ではそんな作業をする機会はないと思うんです。
一部のファンや音源にこだわりを持っている方であれば、いろんなソフトを駆使して作られている印象ですね。
どういう時にこの「疑似ハイレゾ」を使うのかといえば、レコードやカセットなどでしか販売さていなかった音源を補完するために使います。
どうしてもCD化に恵まれず、日の目を見なかった音源たちをデジタル技術で甦らせるんですね。
すでに圧縮さてたmp3等の音源と違って、アナログプレーヤーからアナログとして取り込むので、デジタル化する際にハイレゾ規格の数値を選択できます。
レコードなどのアナログ音源については後述しますが、商品として配信されている音源すら超える可能性だってあるんです。
mp3からハイレゾってできるの?

けれど。
そんなレコードから取り込んだ以外の音源、mp3をハイレゾ化できるのか。
その点については先ほどお伝えした通り、アップサンプリングという形で可能です。
無料のサウンド編集ソフト「Audacity」などで簡単に作れます。
このソフトがあれば「96kHz/24bit」や「192kHz/24bit」などの高い品質でもアップサンプリングできるので非常に便利ですね。
こんな風にお金をかけなくても、気軽に手持ちの音源を疑似ハイレゾ化できるんです。
だからやろうと思い立ちさえすれば、疑似ハイレゾ自体は難なく作れます。
それは意味がない

でね。
「これで昔取り込んだ音源も高品質にできるじゃん!」
って思われる方もいるかも知れません。
ここが落とし穴で。
例えば「mp3」という形式に一度圧縮をかけてしうまうと圧縮した際に失われた音域や情報はもとに戻りません。
それをアップサンプリングとしてハイレゾの領域まで上げたとしても、元の音源の失われた情報自体はそのままなので、「ただ無駄に容量を大きくしただけ」の状態なんですね。
だから容量と規格はハイレゾだけど肝心の音に関してはmp3の劣化したままなんです。
それは非ハイレゾ音源であるならどれも同じなわけで。
CDを「非圧縮音源」で保存した音源でアップサンプリングしても、やっぱり「CD」という規格以上の音質にはならないんですね。
ただ単純にアップサンプリングしただけでは「容量が大きくなるだけ」なのでほぼ無意味がなことなんです。
稀にNAS(Network Attached Storage)、ネットにつないだ専用プレーヤーでデジタル音源をアップサンプリングした際、何らかの処理をして「高音質」に感じるような変換を施す。
そんな機材を聴いたことがあります。
確かに音は確実に変化してたんですが、あくまでオリジナリルの音源から帯域を調整、もしくは味つけをしている感じなので、原曲とは質感が変わってしまいすぐに聴くのをやめました。
質感の変化というのは簡単にいえば、もともと曲自体が持っていた音の「雰囲気」のようなもので、NASのケースだと、その音源の質感にプラスでフィルターをかけたような音質だったんですね。
なので、原曲が非ハイレゾであるなら無理に擬似ハイレゾにする必要はなく、むしろ非ハイレゾの中で高音質を目指すべきと思うんですね。
これまでmp3を使っていたなら、可逆圧縮方式のApple LosslessやFLACを選べばサイズを抑えて音質の劣化がない状態で圧縮できます。
もっとこだわるならWAVやAIFFなんかの非圧縮音声も全然ありだと思う。
容量こそ大きいけど、後にプレーヤー用で圧縮もできるし、編集ソフトへの汎用性も高い。
こういったところを見直してみるのもいいかと思います。
配信されているハイレゾにも注意

で。
疑似ハイレゾというわけではないのですが、
「リマスタリングされたハイレゾ」
についてもお伝えしていこうと思います。
配信サイトで扱われているハイレゾ音源の中には過去の音源をハイレゾ化している音源もあります。
要は昔の歌謡曲など、一度完成した音源をリマスター版として配信しているものですね。
今のようにハイレゾ化を考慮した上で作られている音源なら、ハイレゾの良さっていうのを鮮明に体験できるんですが、そうではない、過去にいったん完成した音源をリマスタリングしたもだと、たまに原曲の良さを壊してしまったような曲も見かけます。
「一聴して音がいい」と感じるように、何度も圧縮を繰り返して音圧を高めた音源ですね。
「音が良くなった」と感じますが、無理やり音圧を上げ調整しているので当然、原曲の質感は変わってしまうんです。
なので、ハイレゾとして配信されている音源にもこういったことが見受けられるので意識して聴いてみて下さい。
もちろん、そういったリマスタリング盤のハイレゾでも良質なものが多くあり、丁寧かつ繊細に、製作者の意図をくみ取って作られているような音源があるのも確かです。
アナログものに向いている

話を戻します。
じゃあどういった時に「疑似ハイレゾ」を使うのかといえば、先ほども少し触れましたが、アナログ音源をデジタル化したい時に向いています。
繰り返しお伝えしている通り、アナログといえばレコードやカセットの音源ですね。
レコードからPCなどに録音する際、やり方次第ではありますが「96kHz/24bit」の規格指定がある程度できる。
なので、ハイレゾと遜色ない音源で保存ができます。
レコードでいえば、CDではばっさりカットされる20kHzという高域の成分があります。
そういった成分は「人間の耳では聴くことができない」とされているのでカットされているわけですね。
でも、どうもレコードの良さってそういう数値では示せない「深み」や「艶」を持っているんです。
ノイズという一面ではCDに劣りますが、音質面ではハイレゾに肉薄するかそれ以上。
なので、そのアナログ音源をデジタル化する。
もはや「疑似」ではなく「ハイレゾ」と称してもいいレベルなんですね。
そういった意味でもアップサンプリングとは違う、元々音源自体がもっているアナログ音源の良さをそのまま余すことなくハイレゾ規格にトレースする。
CDではカットされるような帯域も記録できるのでアナログの良さを十分に体感できるんです。
ちなみに、デジタル化する意味としては、レコード盤などのアナログものは日を重ねるごとに「劣化」していきます。
なるべく状態のいい内にデジタルとして補完し、アナログ音源の良さをどこでも楽しめるようにできる。
そういう利点があるんです。
終わりに
ボクもハイレゾっていうものが流行りだしたときに、手持ちの音源を自分でハイレゾ化できたらいいなと思って、いろいろ調べていたんです。
そもそも、圧縮された音源をハイレゾ規格にするのは「ほぼ無意味なこと」っていう事実はお伝えした通りなんですが、当時のボクはそれを知らなかった。
知らないから、アップサンプリングしてみようといろいろ試して見るわけです。
で。
結局、ただ容量を取るだけで音質が変わったような変化が感じられない。
そこでようやく気付いたんですね。
でもそうする過程で得た経験はアナログ音源をデジタル化する際に役立ったし、決して無駄ではなかった。
なので、疑似ハイレゾ自体は手軽にできますし、その用途さえ間違わなければきっと「いい音源」は作れると思うので、ぜひ今回の記事をぜひ参考に「疑似ハイレゾか」をしてみて下さい。