ボクは幼少期から「音楽を聴く」のが好きで、その流れから必然的にオーディオにドハマりした人間なのですが、もちろんイヤホンやヘッドホンもそれ相応に手を出しているわけで。
その中には高級な機種もあります。
ある日それを見た友人からこんな疑問を投げかけられました。
「高級なヘッドホンと安物のヘッドホンの違いが分からない」
「高くても結局、どれも一緒で音の違いとかあるの?」
と。
その友人も音楽自体は好きなんですが、オーディオに関しては全く興味がなく、使うイヤホンも使い捨てで、「消耗品」という認識がありました。
オーディオに感心がない人にとっては、「1万円でも高すぎ!」
という声も聞きますし、ましてや20万や50万円のヘッドホンなんて狂気の沙汰と思うかもしれませんね。笑
高級ヘッドホンと安いヘッドホンではどう違うのか。
なぜ高額なヘッドホンになるのか、その差は何なのか。
その辺の詳細を掘り進めながら見ていきたいと思います。
なぜ高額になるのか?

手軽に買えるヘッドホンとは対照的に、なんでそんなに高額なヘッドホンが存在するのか。
友人のようにオーディオに興味がない人にとっては、安くても高くてもそこまでの価格差が生まれる意味ががわからない。
そう思うこと自体は当然といえば当然で、オーディオに関わらず他のジャンルでも同じ事が言えると思うんです。
たとえば女性が好むアクセサリー。
素人目からはほぼ同じようなデザインのイヤリングが3つ並んでいます。
でも、3つとも価格に大きな開きがあって、安いもので1万円くらい。高いもので15万円くらいするんですね。
じゃあ、その価格差がどこからくるのかを聞いてみたところ
- 使用している素材が違う
- 一つ一つ手作業で作られている
- 特殊な技術を使っている
- デザインやブランドの価値
などの答えが返ってきました。
これはヘッドホンにも同様なことが言えるんです。
使用している素材が違う

まず高級機種と安い機種を比べて一目瞭然なのが、使用されている「素材の質」です。
極端ですが、フランス製 Focal「Utopia」は50万円クラスの超ド級のヘッドホンですが、これを比較対象に違いを考えていきたいと思います。
ヘッドホンの心臓部には「ベリリウム振動」と呼ばれるかなり加工の難しい振動板が使われています。
普通のヘッドホンはLCP(液晶ポリマー)や、プラスチックシートに金属をコーティングしたものだったり。
ヘッドホンのランクが上がれば、メーカーの色と個性がでる「金属」を採用したものが多いです。
アルミだったりチタンだったり。
中には金を使った振動板があったりします。
またイヤーパッドなんかも、安ければ布製のものから本革のものまで種類が豊富にあり、イヤーパッドの材質や構造によってはそれだけで音に甚大な影響を与えるので見逃せません。
一つ一つ手作業で作られている
「Utopia」の場合だと、ベリリウム振動の加工、小さくて軽量なボイスコイル等そのすべてから歪のない「音」を取り出すためにはより精密な組み立て技術が必要となってくるわけです。
それらをFocalの自社工場で組み立てているので、そこら辺のノウハウなど、ヘッドホンが高額になるのも頷けます。
肝心なのが、多くのヘッドホンには調整機能をもつドライバーが使われているんですね。
どういうことか。
要は、外観やメーカーの違いこそあれ、中身はどれも一緒。
なんていう実態があったりするんです。
社外品のドライバーユニットを低コストで自社製品に適合させるのが目的なので、安い=ドライバーユニットはどれも同じとなってしまいます。
音質的にも、そんな調整機能を設ければ少なからず劣化に繋がります。
もちろん、自社で設計して開発製造を一貫しているメーカーもあって、Focalもそうだし日本のfinalもこれに属します。
調整機能など付いていない、100%Focalオリジナルのドライバーユニットを開発できるからこそ、そこからたたき出されるサウンドは他の追随を許さないものとなります。
この辺の事実を知ると、高いと突っぱねられる高級ヘッドホンの質がどれだけ高いか見えてきます。
特殊な技術を使っている
これも高級ヘッドホンには欠かせなくて、メーカー独自の技術をフルに発揮されて、オリジナリティ溢れる製品が生まれてくるんです。
Utopiaの振動板は「ベリリウム振動」が使われていて加工が難しいと、先ほどもお伝えしました。
じゃあなぜそれが高級ヘッドホンにつながるかと考えると、まず「ベリリウム」の素材自体が希少だということ。
そして、それを加工する段階で人体に有害な毒性を発するんです。
なのでそれらを考慮して、安全に製造できる設備を整え、その中で加工しなければいけないんですね。
実際にFocalも、安定したベリリウム振動板を作り出すために2年の歳月をかけています。
大量に生産できる振動板ならそこまでの苦労はありません。
もともとFocalはスピーカーを専業にしていますが、専業として培われた”スピーカーノウハウ”を惜しみなく投入しています。
そのことで注目したいのが、家でスピーカーを聴いている時のベストな位置関係を、ヘッドホンのドライバーユニット位置決め時に落とし込んでいるんです。
ヘッドホンを耳に掛けた状態でも適切な距離にドライバーユニットを配置することでスピーカーで聴いている時と遜色ない、音の広がりと定位を表現しているんです。
振動板以外でも、ドライバの構造そのものがかなり高度な設計をしていて、ヴォイスコイル、永久磁石、フレームにまでそれが見て取れます。
デザインやブランドの価値
ブランド力。
これが高いと価格も上がってきます。
先にもお伝えした通り、Focalはスピーカーが専業です。
名門スピーカーブランドがヘッドホンの分野に参入したわけですが、
そのデザイン性は優れており、ヘッドバンドからハウジングに繋がるハンガー部分にはカーボンの模様がなされていて、そのハンガー自体が良く見ると絶秒な湾曲を描いています。
ハウジングのシルバーに輝く「FOCAL」ロゴが美しく、トータルでみた外観からは洗練された芸術性すら感じて「さすがだなぁ」と感心せざるを得ません。
カッコいいだったり、おしゃれで色合いが良いとか、そのことは通常のヘッドホンにも感じたりしますが、「芸術的で引き込まれるデザイン性」までは、なかなかそこまで思いませんよね。
同社歴代の最上級スピーカーシリーズが「Utopia」と名付けられていて、その名を踏襲してるヘッドホンだからこそ、そのブランド力もさらに高まるんです。
安いヘッドホンは高級ヘッドホンに勝てない?

ここまで高級ヘッドホン(Utopia)と安いヘッドホン価格の差はどこが違うのか。
その辺りに着目してお伝えしてみました。
以前、友人からの「高くても結局、どれも一緒で音の違いとかあるの?」
に関しては基本的に価格があればその分だけ、時間と手間暇をかけてヘッドホンが作られています。
なので、そこから奏でられるサウンドもそれに比例して良くなっていきます。
しかし。
高級なヘッドホンが万能かと問われればそんな事なくて。
安価なヘッドホンでも使っている音楽の環境次第で「いい音」で聴くことができます。
全ては、機材のトータルな相性なので、たとえUtopiaであってもプレーヤー直刺しでは本来のサウンドは発揮できません。
「Focal Utopiaヘッドホンの実力をフルに発揮!オススメの真空管アンプとは?」
でも書きましたが、Utopiaは鳴らすのが難しいんです
実力がうまく出ていないので、音はあまりいいとは言えません。
なのでその場合だと、しっくり違和感なく聴けるのは意外にも安いヘッドホンが適切な選択だったりします。
その辺がオーディオの面白いところだなと感じずにいられませんね。
おわりに
「高級なヘッドホンと安物のヘッドホンの違いが分からない」
比べてみて何がすごいのか。
今回の記事でその疑問を掘り下げてみましたが、料理に置き換えると分かりやすいかもしれませんね。
価格の高い素材を使って、手間暇かけて作られた料理は当然おいしい。
でも適材適所で、時間がない時は安価でも手早く食べれる食品が重宝されます。
高級なヘッドホンは音もデザイン性も良い。
でも鳴らす環境によっては、安いヘッドホンの方が違和感なく聴けてしまう。
なんて事もありますが、そこを知ると使い分けで楽しむことができるので、それぞれの良さに注目してみて下さい。