ヘッドホンで音楽を聴いていてもっと音質を向上させたい。
そういう悩みってオーディオが好きな人なら大体の方が行きつくと思うのですが、音質をより良くするためにはいくつか方法があります。
- 使っているヘッドホンの質
- プレイヤーの改善
- アンプにこだわる
- DACも見直す
- 電源の強化
- 聴いている音源の質
などなど。
音ってとても繊細で、上記で書いたどの要素が変化しても微妙に音が変わってくるんです。
どれがいいっていう正解はなくて、自分好みの音を探していく中でベストな組み合わせを見つけていく。
いろいろ組み合わせて、試行錯誤して、少しでも楽しくて「良い音」と思える音楽を聴く。
それがオーディオの楽しみ方の一つと思うのですが、他にも音質を変える方法があって、それが「ケーブル」なんですね。
一口にケーブルと言っても、とても奥が深くてその素材の違いで結構音質に影響してきます。
今回はいろんな種類が存在する「ケーブル」にフォーカスしてお伝えしていきたいと思います。
ケーブルで音が変わるのって本当なの?

そもそも、ケーブル1つで音が変わるのか怪しいって思われている方もいるかもしれませんね。
結論から言えば、良くも悪くも確実に音は変わります。
冒頭でもお伝えした通り、音を鳴らすいくつかの要素の内どれか一つでも変われば音は変化していきます。
それくらい繊細なものなんですが、ケーブルにも相性みたいなものもがあって、それがヘッドホンとマッチしていれば確実に良い音へと変貌します。
逆にケーブルの持つ音質傾向とヘッドホンの持ち味が合わなければ、なんだかスッキリしない、あまり聴いていたくない音となります。
なのでその点も踏まえて、ケーブルを変えることで「良くも悪くも音は変化する」と書いたわけですね。
ケーブルの素材

オーディオが好きな中上級者の方なら、自分が愛用するヘッドホンに合ったケーブルをいろいろ試しながら楽しまれていると思います。
電源やアンプ類と比較したら、変化そのものは微々たるものかもしれません。
でも、繰り返しにはなりますがその微々たる変化が、トータルバランスとして音質を劇的に変える。
その一端を担ってる要素と言えるんですね。
ケーブルもいろんな音の傾向をもつ種類があるわけですが、その音を決める素材に遡って見ていきたと思います。
ケーブルの中には導体(線材)=金属の線が織り込まれていますが、それが音質、音色を決めます。
大きく分けて2種類に大別でき、銅(コッパー)と銀(シルバー)です。
ピュアな音を伝達するためにはそれらの素材の純度で決まります。
銅
ヘッドホンケーブルやリケーブル全般、その他でもよく見かける素材が「銅」です。
「OFC(Oxygen-Free Copper=無酸素銅)」はよく目にすると思います。
簡単にOFC(無酸素同)を説明すると、銅の中に含まれる「酸化物」を可能な限り排除して純度を高めている状態を指します。
まぁ、わずかに酸化物は含まれるわけですがいわゆる標準的なクセの少ない素材なので広く使われているんですね。
また、純度を「6N」などで表記されますが、いまいち分かり難いです。
5Nなら「純度99.999%」の銅で6Nなら「純度99.9999%」となるわけですが、要は、純度が高ければその分、導電率が高くなります。
音色の良し悪しは、トータルバランスで決まるので一概には言い切れませんが、素材としては、銅の純度が高いほど伝導率が高くて良いという事です。
PCOCC
これも知名度が高いですね。
1986年に古河電気工業が開発した「PCOCC(単結晶状高純度無酸素銅)」ですが、普通の銅と何がどう違うかと言えば、銅の結晶構造を一体化している点です。
普通の銅は結晶の集まりで構成されているので、そこを一体化することで、結晶と結晶の間に隙間がなくなり、そこに不純物が入り込まないというメリットがあります。
その特殊な製法がPCOCCの魅力で、多くのオーディオ用ケーブルに長年採用され続けてきました。
銅の音色は低域に力がありますが、PCOCCの場合、低域に磨きがかかってパンチのある低音、厚みのある中音域が体感できると思います。
高純度銀(純銀線)
もはや貴金属の領域の線材ですが、純銀線の良さと言えば「高音域」です。
音が変わるという意味でも銅と比較して、明確な変化を感じるのがこの素材の特徴です。
この「高域のキラキラ感」が好みの分かれ道で、「解像度が高くて高域が伸びるがどこか不自然」という印象や、それとは逆に「その変化がうれしくて気分があ上がる」なんて意見もあります。
銀はそもそも銅よりも抵抗値が低くて電気信号の損失が少ないと言われていますが、実のところわずかな違い程度のようなので、あまり気にしなくてもいいポイントですね。
後で詳しく見ていきますが、銀線は一般的に高域が伸びて低音域が痩せる傾向にあります。
銀線の径や太さ、組み合わせる素材次第で決まるので面白いですね。
銀メッキ銅線
銅の素材に銀メッキ処理をすることで、「銅の低音域」と「銀の高音域」をミックスしていいとこ取りしたような線材です。
ケーブルに流れる電気信号は高周波=高音域になればなるほど、線材の表面を通ります。
その作用(表皮効果)の性質を利用したもので、通常の銅のみでは高域がでない。
なので銀メッキ処理をして、高音域を押し出すイメージですね。
純銀線よりも低価格で入手できるのもメリットとして挙げられます。
ここで抑えておきたいのが、銅線に銀メッキされる厚みです。
かなりコアな話なのですが、銀メッキ処理される厚みはおおよそ10~50μ(ミュー)があります。
10μ程度のメッキ処理では銀特有の「高音域の伸び」が全く発揮されないんですね。
なので、上から下まできれいに鳴らすためには「高圧の銀メッキ処理」されたものほど、非常に効果が表れてきます。
素材をミックスする

ここまで各素材をお伝えしてきましたが、それぞれでメリット、デメリットがあります。
銅なら低音が良質だけど、高域がこもって聴こえる、銀線なら高域の伸びはいいけど、低域が痩せる。
それらの特徴をもつ銀メッキ銅線も、そのメッキ処理の厚みで効果が大きく変わり、市販のものはどの程度メッキ処理されているか分かりずらい。
などが見えてきます。
もちろん何度もいうようですが機材のトータルバランスと個人の好みが大きく関係するので決めつけはできません。
そこで素材をミックスする、編み込んでしまう事でメッキ処理単体のケーブルより遥かに音が良くなります。
8本編みや16本編みとよばれる編み込み型のケーブルですね。
編み込みケーブルの威力

僕自身、いろんなリケーブルを試してきたんですが「コレだ!」と思える組み合わせを見つけたので紹介していきたいと思ます。
- PCOCC×8本+高純度銀メッキPCOCC×8本の計16本
- PCOCC×16+高純度銀メッキPCOCC×16の計32本
- 4N純銀線+金メッキの16本
です。
①ALO Audio 「Reference16」などがこれに相当します。
一聴してすぐ気付くような音質変化で、PCOCCと銀メッキ線を編み込んでいるので双方の良さが爆発的に上がります。
②32本編みは①を贅沢にも2本編み込んだ仕様で、トータル32本と径の太いケーブルです。
その威力は絶大で、定位が良くセンターもバッチリ決まり、解像度も群を抜きます。
さらに32本編みによるパワフルさはまさに「圧倒的なサウンド」を体感できます。
③4N純銀線+金メッキ 16本編み
0.14mmの太い純銀線が7本で構成されていて、1コアの太さは約1.2mmです。
この太さが重要で「純銀線」の項目で触れましたが、細い銀線だと高音域が痩せてしまうんでね。
これを太く撚り、金メッキされた銀線を16本編みにすることで「銀線なのに驚くほど豊かでパンチのある低音」に昇華させてくれます。
情報量が多く、群を抜いた解像度と透明感を誇ります。
高音域の切れとスピード、ぼやけないヴォーカル域、弾けてパンチの効いた低音域。
他の追随を許さない脅威的なサウンドです。
Focal「Utopia」に合う
これらのケーブルが個人的に最強といっても過言ではないレベルのものと思っていますが、それらにベストマッチするのがFocal 「Utopia」なんです。
「リケーブルが与える恩恵・Utopiaの能力を底上げするオススメ線材ベスト3」
でも触れましたが、鳴らしにくいUtopiaを100%奏でるにはこれらのケーブルは必須だと思わせるくらい、質が違います。
同社の密閉型ヘッドホン「Steliia」も同様です。
他機種も格段にレベルが上がる
もちろん、ほかのヘッドホンも根本から音質を底上げしてくれます。
fainlの「SONOROUS Ⅷ」は包み込むホール感が魅力のヘッドホンですが、純正ケーブルだと、高域が伸びず、ヴォーカルが遠い印象だったんです。
それが16本や32本編みに変えることで特有の「包み込むホール感」はそのままに、音場の広い、破壊的なパワーと解像度を持つヘッドホンに激変しました。
SONYやULTRASONEの機種でも、それぞれの個性を残したまま同様の変化をもたらしてくれます。
これはヘッドホンに限らず、イヤホンでも効果が得られます。
アンプを使ったわけでもないのに、音圧がより上がるんですね。
それだけ音の情報量やすべての音域が明瞭となるんです。
おわりに
冒頭でもお伝えしましたが、ケーブルによる音質変化は他と比較して微々たるものです。
しかし、編み込みケーブルの質と本数ではそれ以上の効果を期待できるんですね。
もしヘッドホンのケーブルを交換できるのなら、各素材の音質傾向と照らし合わせて好みの音質を探してみて下さい。
今回公開したケーブルはあくまで目安であって、すべての方に合うとも限りません。
それぞれで好みがありますので自分が「ベスト」と感じたものが一番です。
ぜひ、いろんな意見やレヴューを参考にしながらも、自分が納得できるケーブルを探してみて下さい。