真空管の寿命ってどうやって見極める?ベストな交換時期とは

真空管アンプって、半導体アンプにはない絶妙なサウンドを奏でてくれるので今でも一部の愛好家に愛され続けています。

かくいうボクもそうのうちの一人。

真空管の音はもちろんいいんですけど、いわゆるヴィンテージ管と呼ばれている真空管はとくに格別。

真空管の形状や、各メーカーのラベル、元箱。

それらすべてに個性があって集める楽しみもあります。

真空管アンプにそれをセットする。

僕の音楽環境であれば音の入り口が最新の機材。そして音の出口は約70年前の真空管。

そこにロマンすら感じることができます。

そんな真空管には「寿命」というものがあって無限に使えるわけではないんですね。

寿命があることは知っているけど、いつ交換すべきなのかそのタイミングが分からいないという声を度々見聞きします。

そんな真空管の寿命や交換時期、寿命を長持ちさせるコツなんかを紹介していきたいと思います。

なぜ真空管は長く使えないの?

真空管はなぜ寿命というものが存在するのか。

真空管にはその内部に「ゲッター」とよばれる、銀色に鈍く光る膜のようなものが付着しています。

たいていは真空管の下の方に飛散しているものが多いですね。

そのゲッターが使い始めよりも「薄く」なってくると寿命が近づいてきているといわれています。

ゲッターっていうのは真空管の管内で、不純物が付着したりするのを防ぐ役割があります。

管内の真空度が悪くならないように飛散されたものなんですね。

真空管を使い続けたり、経年劣化することでゲッターがどんどん薄くなってくる。

ゲッターが薄くなれば管内の真空度はどんどん悪くなってきます。

そこまでくると寿命を迎えてしまうわけです。

真空管はおおよそ5000時間使えば寿命が来るといわれていますが、適正な電圧が掛けていたか、あるいは保存状態でも変わってくるので、あくまで目安として覚えておくといいかもしれません。

どうやって寿命を見極めるの?

そこでどうやって真空管の寿命を見極めていけばいいのか。

方法は3つあって

  1. 肉眼で確認
  2. 音で確認
  3. 真空管試験機で確認

が寿命の確認方法です。

肉眼で確認

  • ゲッター

肉眼で確認する場合は、先述したゲッターの減少量を確認してみる。

使い始めとあきらかにゲッター量が減っているのであれば寿命が近づいてきているの可能性があります。

ただこのゲッターに固執するのもよくなくって。

古い真空管などでたまに見かけますが、新品の状態であってたとしても、かなりゲッターの飛散量が少ない場合があるからです。

元からゲッターの面積が小さく薄い真空管がある。

「それはもうわずかな寿命しかないの?」

って思うかもしれませんが、寿命はほぼ100%に近かったりします。

なのでゲッターの量はあくまで目安程度でとらえるくらいで十分。

真空管に異常が起きていて、それでゲッターが激減していることを肉眼で確認するくらいです。

ちなみに、完全に使えなくなった真空管はゲッターが完全になくなり、その部分が白く濁ります。

寿命が尽きたか、ガラス管になんらかのヒビや穴が開くとそこで真空が抜けてしまいゲッターが一気になくなります。

全部なくなれば管内が白くなるので交換が必要です。

稀に真空管を購入しようしていたら、そんな白く濁って使えなくなった真空管を販売しているようなところもあります。

知識がない人であれば買ってしまう恐れがあるので注意が必要です。

  • 白いチリが見える

ゲッターの量は十分でもたまに真空管の管内に「白いチリ」のようなものが見えるときがあります。

これも真空管が寿命を迎えているサインの可能性があります。

真空がじわじわ抜けてきているときにこの「白いチリ」が出てきます。

ほどなくしてゲッターが消失して、管内が白く濁ってしまう。

なので真空管をよく目視してこの白いチリのようなものがないか確認してみると寿命が近いかどうか判断できます。

  • ヒーター

また内部で熱を発する「ヒーター」とよばれる部分が何度もつかう事で断線してしまうことがあります。

要は、電球と同じような現象が起こるわけです。

ヒーターが断線する原因はいくつかあって。

  • 経年劣化による断線
  • 適正な電圧をかけていなかったことで断線
  • 古い真空管の場合は適正な電圧をかけて慣らさないと断線する

など。

これらの条件が揃うとヒーターが傷んでしまいます。

なので上記の3点を意識して真空管を扱う必要があります。

  • 真空管のひび割れやソケットの破損

肉眼で確認するのは内部だけではなく、真空管本体もくまなく確認してみる必要があります。

とくに中古で入手した真空管は念入りに見た方がアンプなどの機材を傷めないためにも有効です。

先ほどもお伝えした通り、真空管のガラスにひび割れがある場合は、真空が抜ける可能性が高い、もしくは既に抜けていることが考えられます。

また真空管のソケット部分。

ここが破損しているケースがたまにあります。

ソケット部分とガラス部分の接点がグラグラに緩んでいたりしたら、内部の配線が断線することがあります。

なので手持ちの真空管がそうであるら、交換のタイミングかもしれません。

ソケットのピン折れがあれば、アンプに搭載できないので使えなかったりする。

知識があれば、ソケットを交換できたりしますがそれには技術はもちろん、ソケットを外すことでガラス部分が割れてしまうリスクもあるのでかなり注意が必要になります。

音で確認

外的に問題がなければ、実際に出てきた音で確認してみて判断します。

寿命が近づいてきている真空管ってよく歪んだ音がすると言われています。

そんな違和感を感じたら一度、別の生きた真空管に変えてみて聴き比べをしてみる。

そこで真空管なのかアンプなどの機材が原因なのかわかると思います。

歪んだ音以外には、左右のチャンネルで音圧差があるとき。

あきらかに音圧差があるときは真空管の寿命か、機材トラブルの可能性があります。

これも新しい生きた真空管にかえてみることで確認できます。

  • 真空管試験機で確認

目視や出てきた音で確認するだけでは限界があったりします。

内部の状態をしっかり測定できていない真空管をつかうとアンプやヘッドホンなどの機材を損傷させる危険もあるんです。

FOCAL UTOPIAが故障する原因とその後の対策法とは?」でもお伝えしましたが、測定をされていない真空管を使ったがためにUTOPIAのボイスコイルを断線させてしまったことがあります。

それと同時に真空管アンプのコンデンサーも壊れてしまい、音圧がかなり弱くなりました。

すべては中古で手に入れた内部の特性や状態を測定していない真空管を使ったのが原因です。

なので中古球を購入するときはしっかり測定された真空管を選ぶことが大切になります。

説明書きにそういった特性などの測定情報が記載されていなければ、どんなに珍しい真空管でも手を出さない方が無難。

真空管代金もかかりますし、機材を破損させればそれを修理する費用も高額になる可能性があります。
(UTOPIAとアンプの修理費は本当にいたかった。。笑)

ボクはそんなリスクを回避するため、専門店でしか扱わないようなデジタル試験機Amplitrex「AT1000」で精密測定しています。

寿命の確認はもちろん、左右のマッチングも正確に測定できるので重宝しています。

内部のショート検査は当時使われていた試験機、「Hickoc 6000A」で確認しています。

新旧の真空管試験機で念入りに内部の特性を確認しているくらい慎重に扱っているので、寿命や異常な真空管はこの時点で選別ができる。

普通はここまでしないと思うので、真空管の購入前に、出品者に詳細な情報を聞いてみるなどして真空管の状態を知ることが先決だと思います。

アンプの過剰電圧も寿命を縮める

真空管そのものはまったく異常がなく、新品の状態であっても

適正な電圧をかけていないことで著しく寿命を縮めてしまうことがあります。

真空管には規定された電圧があってそれを超えるような電圧がかかると真空管の寿命が縮むんですね。

真空管アンプとしての製品であればその辺はコントロールできますが、なぜそんなことを言っているのかというと、とくに海外製のアンプは115vが必要になってきます。

日本は100vなので、海外製の真空管アンプ本来はその実力を発揮できません。

それを補うために「ステップアップトランス」などで昇圧している方もいると思います。

ボクもそうしていました。

実はそこに落とし穴があって。

地域によってコンセントの電圧差が違うんですね。

なので昇圧した電圧をテスターなんかで計測すると117vなどになることがあります。

これは115vを超えているので真空管にとっては良くなくって。

なので自分が住んでいる地域のコンセントを一度計測してみることをオススメします。

また、時間帯によっても電圧変動があったりするので油断できません。

ボクはそんな電圧変動に備えて、「スライダックトランス」を使って手動で小まめに電圧を調整しています。

かなり便利なので、真空管アンプを愛用している方にとっては嬉しいアイテムですね。

適正な電圧をかけてこそ、真空管アンプの実力も発揮されて音が楽しめるのでこういったところから見直すといいと思います。

終わりに

ここまで紹介してきた真空管の交換タイミングや寿命を縮めないための対策法、測定の重要性を見て「真空管ってめんどくさい」と感じた方もいるかもしれません。

そうなんです。

真空管をベストな状態で楽しもうと考えたらかなりの手間が必要となります。

けれど。

それはレコードなどのアナログものと同じで。

手をかけた分だけそれに呼応するかのように音は良くなります。

ボクはそれを楽しんでやっているので苦ではありません。

出てきた音も半導体アンプでは実現できないようなとてもいい音です。

ヴィンテージ管でしか味わえない「音」がそこにはあります。

それを実現するためにも、真空管の寿命を見極めて、ベスト交換が大切になってきます。

方法はこれまでお伝えした通り、一つ一つをクリアにしていけば余程の劣悪な球に当たらない限り問題はないと思うので試してみてください。

それでは。