FOCAL ヘッドホン「STELLIA」をフルドライブさせて聴いてみた結果

FOCALのフラグシップヘッドホン「UTOPIA」の爆誕から約3年。

開放型の「頂点」を極めたと言っていい、そんな驚異のサウンドを鳴らしてくれたUTOPIA。

それと同じ心臓部をもって生まれたのが密閉型の「STELLIA」。

このSTELLIAもUTOPIAと同じく、これまでのヘッドホンにはなかった新しい音楽体験を感じさせてくれます。

なんだろう。

どんなに高価なヘッドホンを聴いていても、

どこか「音の閉塞感」を感じるというか。

そんな諦めに近いような、ヘッドホンの音に対して「この程度かな」と妥協していた部分がどこで見え隠れしていたんです。

でも、そんな悩みを見事に打ち破ってくれたのがこの「FOCALヘッドホン」だったわけです。

「UTOPIA」はニア・フィールド・スピーカーっていわれるレベルの、まさにスピーカーサウンドを実現している。

んで「STELLIA」に関しても鳴らし切れれば、そこに肉薄する音が出てきます。

そのサウンドは、激戦区である「密閉型のトップ」に君臨するんじゃなゃいかなぁってボク個人的にはそう思っています。

STELLIAは他のFOCALヘッドホンと何が違う?

FOCAL自体はこれまでいくつかのヘッドホンを生み出しています。

「他のFOCALヘッドホンと一線を画す」そんな心臓部をUTOPIAとSTELLAは持っているわけで。

FOCALといえばハイエンドスピーカーのブランドとして名高いです。

その上級のハイエンドスピーカーには「ベリリウム振動板」とよばれるものを使われてきのがこれまでの通例だったんですね。

そんな上級スピーカーにしか使われていなかった「ベリリウム振動板」をヘッドホンに落とし込む。

これが、上級スピーカーと同じ名を拝した「UTOPIA」です。

もちろん、これまでにUTOPIA以外でベリリウム振動板を搭載したヘッドホンは存在していません。

「STELLIA」を除いて。

他のFOCAL製のヘッドホンの振動板には「アルミ合金製」のものや「マグネシウム振動板」が主流。

明らかにSTELLIAは他のヘッドホンとの差別化をされているんですね。

STELLIAの全体的な形としては「FOCAL Elegia」などと似た形状なんですが、そこに施されたデザイン性が凄まじい。

まず一番に目を引くのが個性的で洗練されたそのデザイン性。

チョコレートのようなブラウンと、上質なオレンジの色合い。

このカラーをメーカーでは「コニャック」と呼んでいるそうです。

靴やカバンなどと同じで、熟練の職人の手によって一つ一つ生み出されたような。

そんな一点物のオーダーメイド感がただよう風格。

イヤーパットもかなり品質がいい「レザー製」。

変に加工された感のない、優れた質感です。

耳へのフィット感も絶妙な加減で、しっかり耳全体を包み込んでくれます。

付属のケーブルにまで、卓越したデザイン性は活かされているので

「Made in France」の洗練されたデザインを隅々まで楽しむことができます。

UTOPIAとSTELLIA

開放型の「UTOPIA」対して「STELLIA」は密閉型になるわけですが、この2機種に共通するのは、同じ心臓部を持っているという点です。

心臓部とは音の要「ドライバーユニット」ですね。

ここがベリリウム振動板と呼ばれる、かなり加工が難しくて専門の技術を必要にするものです。

でもその代わりに得られるサウンドっていうのが他の追随を許さないほど。

長年FOCALがスピーカー製造で培ってきた技術をすべて注ぎ込んで作られたヘッドホンなんですね。

もちろん同じ心臓部を持ってはいても「開放型」と「密閉型」の違いはあるので当然音の傾向は違ってきます。

UTOPIAは開放型の特性をフルに活用し、ドライバーの搭載位置、イヤーパットの作り、それらのトータルバランスとしてスピーカーに近い音を実現できた。

かくいうSTELLIAは密閉型という、これまで「ヘッドホンの領域を抜け出せていなかった」そんなヘッドホンが溢れるジャンル。

でもそこはFOCALヘッドホン。

あくまで密閉型というジャンルの中でも、UTOPIAのようなスピーカーに近いサウンドを鳴らしにくるんです。

「広大な空間表現」という程ではないんですが、それでもやっぱりUTOPIAのポテンシャルはしっかり継承している。

音だけにフォーカスしてみても、同じハイエンド級の密閉型ヘッドホンでもこの音は出せないだろうってレベルで、一つも二つも抜きんでている。

FOCAL STELLIAと他社製のヘッドホンで明確な差別化をしてもいいレベルです。

んで、UTOPIAとSTELLIAでの装着感の違いもあって。

どちらかといえば、UTOPIAの方が重く感じて長時間での使用には少しキツかもしれません。

それに比較してSTELLAはかなり軽い。

イヤーパットの装着感もピタっとしていて遮音性もかなり高く感じます。

また、UTOPIAに比べれば全然軽い。

外に持ち出してもそんなに疲れることなく音楽を楽しめると思います。

注意点としてレザー製なためか、手入れを怠ると白い痕のようなものが時間が経つにつれイヤーパットの表面にでてきます。

皮脂汚れなので、使い終わった後は「から拭き」でサッとふき取ることをオススメします。

STELLIAの仕様

STELLIAのスペックは以下の通り。

  • インピーダンス:35Ω
  • 感度:106dB SPL/1mW@1kHz
  • 周波数特性:5Hz-40kHz
  • 全高調波歪率:0.1%@1kHz/100dB SPL
  • ドライバーユニット:40mm M字型ピュアベリリウムドーム
  • 質量(本体):435g
  • コネクター(ケーブル長):3.5mmステレオ/Φ3.5mm(1.2m、6.3mm変換プラグ付属)、4pin XLRケーブル

とまぁ、35Ωと低インピーダンスなのでスペック上で見ればプレーヤー直刺しでも全く問題なく鳴らすことができます。

けれど。

後述しますがあくまでこのスペックは目安にはなっても、出てくる音は数値上とは違ってくるわけで。

そこにアンプなどをつなぐか繋がないかでも大きく変わってきます。

STELLIAも例外なく。

ただ、スペックにある通り「鳴らしやすい」っていう事実に変わりはないです。

でもアンプなどで音楽環境を詰めることで、まだ眠っている潜在能力を引き出すことは可能です。

その伸びしろがSTELLIAではけっこう大きかったり。

ただ同梱のケーブルでも3.5mmステレオミニがありますし、インピーダンス的にも音量は取りやすい。

そつなく鳴らす分にはDAP直刺しでも全然あり。

ところが何度もお伝えしている通り、このSTELLIAにはUTOPIAと同じ

「ベリリウム振動板」が使われています。

ただ鳴らす分には問題はないんだけれど、ドライバーを十分にフルドライブさせるためには「システムを詰めること」でさらなる音質アップを図れるんです。

フルドライブさせた音楽環境

で、STELLAのポテンシャルをフルドライブさせるにはどうしたらいいのか?

そこでボクが実際に使っている音楽環境を例に、「どんな音質変化があるのか」をレビューしていきたいと思います。

あくまでもボクの音楽環境であって、これが「正解」ってわけではないし、他にもいろんな組み合わせがあると思います。

それぞれで最適解を見つけていってもらいたいのですが、一つの例としてぜひ参考にしてみて下さい。

アンプ

アメリカWoo Audioのハイエンド真空管アンプ「WA22」

いわゆる据え置き型のアンプで

  • フルバランス
  • オール三極管
  • ディスクリート構成
  • トランス出力

と真空管の持ち味をすべて出し切れるような「純粋に真空管だけで増幅する」稀なアンプなんです。

ポータブル環境でも同社の「WA8」を使っていますが、整流管がないだけで構成的にはWA22とほぼ変わりません。

なので詳しい仕様については「真空管ポタアンの知られざる真実と驚異の威力とは」で書いているので参考にどうぞ。

まずはここでSTELLIAを強力にドライブします。

真空管を入れ替えることで確実に音質は変化します。

なのでそこを楽しむのも真空管アンプの良さですが、そんな微妙な音の変化をSTELLIAであれば描き出してくれるんです。

DAC

こちらもアメリカのWyred 4 Soundという「知る人ぞ知る」かなりマニアックなメーカー。

DACやアンプ、プレーヤーを主体に製作しているハイエンドメーカーですね。

そこの「DAC-2v2SE」とよばれる最上級の据え置きDACを使っています。

驚くべきは、これでもかというくらい高音質パーツをふんだんに使っている点。

そして電源部がとにかく優れている点。

巨大なトロイダルトランスに電解コンデンサー群、左右と差動分4chすべてが独立電源。

しかもそのすべてがディスクリート回路。

まるでパワーアンプの電源部ですね。

ピラミッド型のどっしりとしたパワフルなサウンドはここから生まれます。

集積回路を使わず、FET(電界効果トランジスタ)、抵抗、コンデンサ単体パーツでくみ上げられたアンプ部は、実に厚みのあるアナログライクな音を出します。

要は、パーツの一つ一つにコストがものすごくかけられたDACなんです。

真空管アンプもディスクリート構成なのでとても相性がいいというポイントも見逃せません。

プレイヤー

プレイヤーも据え置きを使っていて、こちらもWyred 4 Soundの製品です。

「MS Music Server」とよばれるパソコンですべてを管理してネット経由でコントロールする、いわゆる「NAS」になります。

MS Music Serverの特出すべきポイントはDAC-2v2SEと「I²S接続」が可能なこと。

簡単にいえば、MS Music Serverに格納されている音源データをDAC部分で「デジタルからアナログ処理」するわけですが、このI²S接続ができることでプレイヤーからDACチップに到達するまでの区間で一切の変換処理をしていません。

これまでのプレイヤーであれば、そのほとんどがDACチップでアナログ処理するまでの間でいくつかの「変換処理」をしていて、すくなからず音源が劣化しています。

I²S接続はそんな余計な変換処理をせず音源をDACチップに届けるので「音の鮮度が抜群に良くなる」わけです。

音の鮮度がいいので音楽の生々しい表現やリアルさがかなり増します。

STELLIAはそんなところも細部まで鳴らすので、まずDAP直刺しでは体験できないそんな音を再現します。

リケーブル

続いてリケーブル。

リケーブルの効果はほとんどない。

そんな風に言われることもありますが、全然そんなことはなくって。

もちろん、相性があるので悪いものを選べば効果は薄くなる。

そこは事実です。

でも余程のことがなければ効果は得られます。

ボクは純銀線に金メッキを施した16本編みの太いケーブルを使っています。

この線材はイヤホンでも使っていて。

それくらい音の純度を下げることなく、すべての音域で昇華させたサウンドを伝送してくれる。

そんなケーブルです。

フルバランスの真空管アンプとつなぐので、バランスケーブル仕様。

このリケーブルをするだけでもSTELLIAの良さって純正ケーブルと比較してもかなり変わってくるから面白いです。

大げさなように聞こえるかもしれませんが「アンプをつなげたの?」っていうレベルで変わってくる。

STELLIAをお持ちのかであれば、まずはここを試してみてもらいたいくらい音の変化がでます。

電源

ボクのブログでは繰り返し出てきているんですが、それくらい「電源」って大事。

どれだけいい機材を揃えたとしても、電源が劣悪だとパフォーマンスにかなり大きな影響がでてしまう。

ここを改善するだけでも音って変わるんです。

それもいい方向に。

電源ケーブルもそう。

そもそもコンセントから出ている電圧も地域や時間帯でも変動があります。

ボクは真空管アンプを使っているので、真空管の寿命を縮めないためにも

「テスター」でコンセントを毎回計測しています。

微調整はスライダックトランスを使って手動で電圧調整しているほど。

んで。

DACなどの機材もアイソレーション電源で一括管理しています。

それくらい電源にこだわっていて。

それ位してはじめて、機材のパフォーマンスをフルに発揮できるとボクは考えています。

密閉型の最強形態

ボクなりにかなり音楽環境は詰めているつもりです。

この環境で鳴らすSTELLIAっていうのはやはりすごくいい。

スペックだけでは判断できない部分になりますが、ただプレーヤーにつないだだけでは鳴らせないサウンドがあるわけです。

STELLIAって密閉型だから、どうしても閉塞感のある音になってしまう。

それは密閉型のどのヘッドホンであっても同じわけで。

でもね。

音楽環境をしっかり整えることで、そんなレベルの悩みすらふっ飛ばしてしまう。

間違いなくFOCAL 「STELLIA」だからこそ、その殻を破れたんですね。

全体的には少し俯瞰した音の印象。

けど口元が近く、UTOPIAにはない「リアリティーのあるヴォーカル表現」がなんともクセになる。

女性ヴォーカルなどは色気や甘さ、そして優しさを十二分ににじませて聴かせてくれます。

「思わず目をつむって歌声に身をゆだねたくなる」

そんな音。

かといって躍動がある曲調が苦手かといわれればそんなことはなく。

ダンピングの効いた低音域と伸びる高音域で聴く人を高揚させます。

UTOPIAとはまた違う表現方法なんだけれど、上質なスピーカーで音楽を聴いているような、そんな錯覚をしてしまうくらいの音質。

むしろ、これがSTELLIAに秘められた本当の能力なんだと実感せずにはいられないサウンドなんです。

よく「思ったほど音がよくなかった」という理由で中古に出す方がいますが、おそらくSTELLIA本来の音を聴けていない可能性があります。

ボク個人的には密閉型最強といっても遜色ない音質だと思っています。

終わりに

UTOPIAが発売されて以降、それをずっと愛用していました。

そんなさなか、ベリリウム振動板搭載の「密閉型ヘッドホン」がFOCALから出るとアナウンスされた時は、まるで少年のように指折り数えてワクワクしましたね。笑

「密閉型だから開放的な音は望めないにしろ、音はいいだろうな」

そんなことをあれこれ妄想しながら待ちました。

で、実際に聴いた音っていうのがその予測をいい意味で裏切ってくれたわけです。

密閉型という器の中で、UTOPIAとうは違う角度で見事に「スピーカーサウンド」を鳴らしてくれる。

しかも、密閉型の利点として比較的音漏れも少ないです。

音が良く、デザイン性にも優れたSTELLIAを外に持ち出せる。

そんな持つ喜びすら味あわせてくれる。

密閉型ヘッドホンに音の行き詰まりを感じていたり、「音の良い」新しいヘッドホンを探している方に、FOCAL 「STELLIA」をオススメできるとボクはそう感じています。

ぜひヘッドホン選びの参考にしてみて下さい。

それでは。